9月23日読了。

宍倉勲は二十代半ばで父が興した会社を引き継いだが、十五年後に敢えなく倒産させてしまった。罪悪感をぬぐえないまま再就職し定年まで働き、もうすぐ「人生の定年」も迎えようとしている。だが、そんな勲の働く姿こそが、娘の香を「会社」の面白さに目覚めさせて---「仕事」によって繋がった父と娘を、時間をさかのぼって描く連作長編。




私が勝手に名付けた『お仕事シリーズ』の新作。

デザイン事務所、バスガイド、内装会社、食品卸業…等々、ギョーカイのことをおもしろおかしく、そしてほろっと泣ける形で紹介してくれる、勝手に名付けた『お仕事シリーズ』は、あっという間に読めてすごく引き込まれるナイスな作品ばかり。


でも今回のは”職業”としての床屋さんではなく、お客さん(主人公)の側から、節目節目で床屋さんと関わってきた記録の連作集である。

まず連作というと、あるシチュエーションを踏まえて先へ進むものとなんとなく思っていたから、時間がさかのぼっていくこの作品がとても新鮮だった。
そして、紹介欄にもあるように、父と娘のオシゴトの物語がテーマの中、最後の作品が(もうこの人柄が大好きになってしまった)主人公の死後のお話で、父の意志をついで前へ進もうとする娘とそれを優しく見守る母との会話が父の不在をより鮮明にし、思わず泣き笑いの読了でした。


じんわり温かく、そして笑いを忘れないこういう作品は、疲れた時にいい。
なんとかなるさ、とまた明日が来るのを楽しみにできる。

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